ものづくりをする職業の中でも、とりわけ大きなものを生み出す建築家。
上の写真の安藤忠雄さんは世界でも高く評価されている建築家ですが、明るいキャラクターでテレビにもたびたび出演されます。
憧れの職業の一つに数えられる建築家ですが、その専門性から社会人になってから建築家を目指そうと考える人は少ないです。
建築家になるにはある程度若い時、できれば子供の頃から興味を持って、将来を意識していくことが望ましいと言われています。
そこで、今回は建築家になるには小学生や中学生の頃にどんな勉強法をしたら良いのかを紹介します。
また、文系の高校や大学からでも建築家になれるのかどうかにも触れています。
1.建築家とは?
建築家とは、家やビルなどの設計をする人です。
また、建設工事の際、その建物がきちんと設計図通りに作られているかをチェック(監理)もします。
しかし、設計・監理者を全員「建築家」というのかというと、そうではありません。
①建築家の定義
アメリカやヨーロッパ、オーストラリア等諸外国では建築家=アーキテクトという職業(資格)が法的に定義されています。
しかし、日本では法的な定義なありません。
国土交通省では、「日本におけるアーキテクト=一級建築士」と扱っています。
海外のアーキテクト登録等に必要な書類に関する事項に「日本のアーキテクト(一級建築士)登録証等を提出」という文言があるため、二級建築士・木造建築士はアーキテクトではないと考えるのが妥当ですね。
ただ、日本の全ての一級建築士をアーキテクトとして扱うのは、世界標準ではないんです。
世界では、人口1万人に対するアーキテクトの割合は5人程度なのに対し、日本の一級建築士の登録人数は25人程度となっていて多いんです(人口1億2000万人に対して約31万人)。
以下の条件で絞ると、世界標準の割合に近くなります。
- 一級建築士の資格を取得している者
- 主に意匠設計業務を行っている者
- 一級建築士事務所の開設者かつ管理建築士である者
建築家=アーキテクトは、意匠設計を行う人の事を言います。
意匠設計とは、間取りやデザイン・機能性などの計画を行うことです。
建築の設計にはそれ以外にも、
- 構造設計(建物の強度を詳細に計算する設計)
- 設備設計(設備機器やその配管・配線の設計)
などがあり、公共施設などの大規模な建築物の場合は完全に分業されています。
「建築家=アーキテクト」は国家資格化するなどして、法律(建築士法)できちんと規定した方が分かりやすくて良いですよね。
②建築家の問題点
上で「建築家」には法的な定義がないと書きました。
そのために建築士の資格を持っていない人でも「建築家」と自称することがあるんです。
建築士法という法律では、建築士でない人が建築士と紛らわしい名称を使うことを禁止しています。
つまり、自称建築家は違法ということですね。
しかし、「建築家」が法的に定義されていないために、「建築士ではないが建築家である」が通ってしまっているのが現状です。
お客さんは、有資格者だと信じて設計やデザインを依頼しますが、後になって実は資格がなかったということが判明してトラブルになるケースがあるんですよ。
建築士の資格がないということは、建築を体系的に学んでいないということになります。
一級建築士の資格は、一発で学科と製図に合格することは難しいですが、しっかり勉強して何度かチャレンジすれば合格できます。
せめて一級建築士試験に合格するまでは、「建築家」を名乗るのは待ったほうが良いですね。
2.建築家になるには?
建築家になるには、学生のうちからそれなりの勉強をする必要があります。
社会人になってからでも建築家になることはできますが、一級建築士の資格を学歴ゼロから取得するには、最短で実に12年必要です。
▶ 一級建築士試験の難易度や合格率は?学科試験の独学勉強法も
では、小学生や中学生はどんな勉強をした方が良いんでしょうか?
①小学生の勉強法は?
建築家になるために、小学生はどんな勉強をすべきでしょうか?
小学生の場合、建築家になるための具体的な教科などは気にしなくて良いです。
ただし、勉強しなくて良いという訳ではありません。
むしろ、満遍なく全ての教科を意欲的に工夫しながら頑張ることが必要になりますね。
工夫するというのは、
- どうしたらもっと効率よく勉強できるか?
- どうしたらもっと楽しいか?
ということを考えるということです。
また、自分以外の人に対して(特に高齢者や障害者に対して)思いやりを持って生活することが大事です。
建築は工夫と配慮が必要な職業ですから、小さい頃から生活の様々な面において工夫と配慮をすることを覚えていくべきですね。
工夫と配慮こそが設計力・デザイン力の基になる能力となります。
②中学生の勉強法は?
中学生になったら、小学生の頃から習慣にしている「工夫と配慮」を続けながら、少しだけ建築家になることを意識した勉強に取り組むことになります。
その勉強とは、
建築物の実物を見ることと、絵を描くことです。
建築家の仕事は、かっこいいデザインだけでなく、出来上がった後に使いやすい建物を作る使命があります。
そのためには、建物がどのくらいの大きさで、中がどんな風になっているかを実感として知っている方が良いですよね。
そして、できればスケールを持っていって、実測をして見るとより良いですね。
実測とは、実際にその場所の寸法を測って、手書きの平面図に記入することです。
例えば、学校や家の柱と柱の間の距離がどのくらいあるのかスケールをあてて測ってみます。
↓スケール
実測は、普段の生活で使う建物をはじめ、旅行先のホテルや施設など全部測ってやるくらいの勢いでやっていくとコレクション・研究としても楽しいものになりますよ(^^)
また、建物だけでなく家電や調理器具、照明器具・デスク周りのものなど生活に使う全て者者寸法を知ることはすごく大事です。
↓生活道具の数々とその寸法
出典:『新・住宅Ⅰ』(市ヶ谷出版社)
特別な勉強といっても、そういった日常的にできる範囲になりますね。
では、高校はどうしたら良いでしょうか?
3.建築家になるには通う高校や大学は文系でも可能?
建築家になるには、高校・大学を選定する必要が出てきます。
①建築家になるための高校は?
建築家になることを考えた時、高校はどんな高校を選ぶべきでしょうか?
高校を卒業したら社会人になる場合と、大学に行く場合では少し高校の選定を変える必要があります。
(1)卒業したら社会人になる場合の高校は?
高校を卒業してそのまま建築設計事務所等の会社に入る場合、できるだけ早い時期に一級建築士の資格を得るためには、まず第一段階として二級建築士を取得する必要があります。
二級建築士になるには、指定科目のある高校を卒業する必要があります。
※指定科目のある高校は最後に紹介します。
指定科目をきちんと受けて卒業した場合、卒業と同時に二級建築士の受験資格がもらえます。
二級建築士に合格後、4年間の実務経験ののちに一級建築士の試験を受けることができるんです。
ちなみに、もし指定科目のない高校を卒業した場合、二級建築士の受験資格がもらえるまでは7年間の実務経験が必要になります。
かなりの時間ロスになってしまいますね。
(2)大学や専門学校にも行く場合の高校は?
高校を卒業した後、大学や専門学校にいく場合は、必ずしも建築の指定科目のある高校を卒業必要はありません。
むしろ、工業高校などの専門性のある高校よりも、進学校(いわゆる普通高校)の方が良いかもしれませんね。
下で紹介していますが、一般的には理系コースに進む方が有利だとされています。
しかし、進学したい大学によっては文系コースでもOKです。
②建築家になるための大学は?
建築家になるための大学は大きく分けると以下のようになります。
- 工学系の大学(理系)
- 芸術系の大学(文系)
(1)工学系の大学
建築家になるには、多くの場合工学系の大学の建築学科に進学します。
超高層ビルなど大規模な建築物の設計には、理工学系の知識が必要不可欠になってくるからです。
建築家になるための主な工学系の大学として、一級建築士試験合格者数ランキングトップ10を紹介します。
- 1位 日本大学(理工学部建築学科)=220人
- 2位 東京理科大学(工学部建築学科)=133人
- 3位 芝浦工業大学(建築学部)=91人
- 4位 早稲田大学(創造理工学部建築学科)=90人
- 5位 近畿大学(建築学部 ※文系受験も可能)=82人
- 6位 東海大学(工学部建築学科)=67人
- 6位 明治大学(理工学部建築学科)=67人
- 8位 工学院大学(建築学部)=66人
- 9位 京都工芸繊維大学(造形科学域デザイン・建築学課程)=56人
- 10位 法政大学 (デザイン工学部建築学科)=55人
一級建築士受験に必要な指定科目のある全ての大学は、最後に紹介する「指定科目確認ページ(都道府県別)」で確認できます。
近畿大学の建築学部は基本的には理系ですが、文系の受験者にも対応しています。
また文系受験合格者のカリキュラムは、文系を考慮した内容・日程です。
(2)芸術系の大学
建築家になるための芸術系大学の一級建築士合格者数ランキングベスト5は以下の通りです。
- 1位 武蔵野美術大学(造形学部建築学科)=22人
- 2位 大阪芸術大学(芸術学部建築学科)=18人
- 3位 東京芸術大学(美術学部建築科)=15人
- 4位 京都造形芸術大学(芸術学部環境デザイン科)=15人
- 5位 神戸芸術工科大学(デザイン学部環境・建築デザイン学科)=13人
一級建築士試験に必要な指定科目のある全ての芸術系大学は最後に紹介する「指定科目確認ページ(都道府県別)で確認できます。
理系の大学を出て建築の仕事に就いている人からすると、芸術系の大学で本当に建築の勉強ができるのか?
と疑問に思うはずです。
しかし、芸術系大学の建築科では、理工系大学で学ぶのと同等以上に建築家としての能力を養うことができます。
一般的に理工系大学では
- 建築計画
- 設備
- 構造力学
などの理論を体系的に学び、並行して
- 製図
- 模型技術
- 実例の研究
などを行って総合力を養っていきます。
一方の芸術系大学の建築科では、建築設計の実技の中で建築知識と技術・技能を学んでいくんです。
両者は似ていますが、芸術系のほうがより実践的で、体に染み入るように建築学を学べると考えられますね。
また、教員の数に対して学生の数が少ない傾向があります。
少数精鋭ということですね。
自分には理工系と芸術系のどちらが合うかをよく考えて進路を決めるようにしましょう。
③指定科目のある高校・専門学校・大学
上で書いたように、高校卒業後に社会人になる場合、できるだけ早く一級建築士の試験を受けるためには「指定科目」のある高校に行く必要があります。
二級建築士受験資格に必要な指定科目のある高校・専門学校・大学は以下のページから確認できます。
一級建築士受験資格に必要な大学・短大・専門学校等は以下のページから確認できます。
指定科目のある学校を卒業しても、指定科目をきちんと受講していない(単位が取れていない)場合は受験資格がないということになってしまうので、しっかり授業を受けましょう。
以上、今回は建築家になるにはどんなふうに勉強したら良いか、また高校や大学はどうやって選ぶべきかを紹介しました。
私の友人の建築家は、もともと建築家になりたかった訳ではないと語ってくれたことがあります。
だから建築を学んだんだよね。
言い換えると、「建築」を使ってデザイン・ものづくりをやっている。
ということです(^^)
斬新な意見ですよね。
やはり普通の人の視点とは角度が違っていて面白いと思います。
単なる建築士ではなく、「建築家」はやはり芸術家の側面があって、ものづくりに対する情熱が凄いなと感じました。
この記事が建築家になるための参考になれば嬉しいです。