一級建築士の製図試験は、時間との戦いです。
6時間30分の中で、課題文の詳細な要求をまとめてきちんとした建物の図面にしなければなりません。
そんな中、多くの受験生が時間がないと感じています。
この記事を見ているあなただけじゃないんで、安心してください。
今回は一級建築士製図試験の時間配分と時間短縮方法の紹介です。
階段の早い書き方や、個別に練習すべきもの等の解説もしています。
ぜひ参考にして、合格に一歩近づいてください。
資格学校では得られない考え方となっています。
1.一級建築士製図試験の時間配分アドバイス
一級建築士製図試験の理想の時間配分は以下の通りです。
①エスキス(2時間)
②記述(1時間)
③製図(3時間)
④見直し・修正(30分)
これが理想なのは間違いありませんが、できればもっと短縮して時間の余裕を作っておきたいところです。
つまり、④見直し・修正の時間をもっと増やしたいということですね。
記述はけっこう分量があり、1時間を大きく切るのは難しいでしょう。
作図は現状3時間を超えてることが考えられます。
本番までに3時間で描ききるのが目標といったところです。
ということは、エスキスの時間を短縮するしかないということですね。
2.一級建築士製図試験の時間短縮方法は?
ということで、エスキス時間の削減こそが一級建築士製図試験の時間短縮方法です。
ここではエスキスの時間削減方法を説明します。
エスキスの手法は資格学校によっても違うし、「製図のウラ指導」も独特です。
誰もが自分にあった方法を模索しているはずです。
しかし、エスキスの手法が違っても、考え方を変えることによって時間短縮ができるんです。
だれもがエスキスで「良いプランを作ろう」としています。
ここで言う良いプランは、課題文の要求を100%満たすプランのことです。
6時間30分の中で、注文者の要求をすべて満たしたプランを作ることは不可能ですよね。
一級建築士製図試験においても、6時間半の中で課題文の要求をすべて満たすのは不可能だと言えます。
そうはいっても、あえて要求を外すようなプランニングをするというわけではありません。
エスキス、部屋をレイアウトする段階で、いくつかボツにするプランができますよね?
それをボツにせず、採用するんです(笑)
もちろん、
- 面積の過大・過小
- 最重要要求室が欠落
- 図面相互の不整合
はダメですが、
- 隣接させる
- 動線に配慮する
- 要求室の面積が狭い
- 階段が雁行している
などはOKにします。
「せっかく階段がまっすぐ通った綺麗な図面が描けるようになったのに、実力発揮しないまま作図なんて嫌だ」
と思うかもしれませんが、落ちるよりはマシです。
一見、ダメだと思えるプランでも、合格図面になると思えば頑張って描ききれますよ。
ですから、ダメなプランで作図する練習をしてください。
もちろん、資格学校では先生からダメ出しをたくさんされるでしょう。
でも、作図時間が増えますから、書き落としは少なくなります。
プランや動線がイマイチになるだけです。
その代わり、メチャクチャ早くエスキス終わりますよ。
ぜひ、エスキスのハードルを下げて、早く記述に入れるように変えてみてください。
きっと良い結果につながります。
3.一級建築士試験の効率の良い練習方法は?
本番まではまとまった時間をいかに確保できるかが勝負の分かれ目となりそうです。
しかし、どしても3時間以上のまとまった時間の確保が難しい場合は、スキマ時間を利用した練習方法もあります。
スキマ時間を使うということは、一式図面を作図するのではなく、部分部分を個別に練習するということですね。
以下の項目は、それぞれ個別に練習可能です。
それぞれ説明します。
①階段・エレベーターを個別に練習する
一級建築士の製図試験には必ず
- 利用者用の階段×2
- 管理用の階段×1
を描く必要があります。
特に階段踏面をきちんと描き込む必要があるため、慣れないとすごく時間がかかりますよね。
しかし、階段を早く描くコツがありますので、それをまず掴んでから、ひたすら階段だけを書く練習をすると早くなります。
階高=4000
グリッド=7000×7000
段数=26
上記条件の階段を早く書くための書き順は以下の通りです。
(1)7000×3500に階段室の壁を設定する
柱と柱の間は縦・横ともに7000です。
いわゆる7×7グリッドですね。
利用者用の階段ということで、3.5m使います。
(2)階段の両側(上下)にW1500の踊り場を設定して線を引く
2000のところに引いてしまわないように注意です。
(3)壁・手すり・ドアを書く
包絡は気にせず、サラッと書きましょう。
(4)階段の中心に縦に2等分する線を引く
だいたいでOKですよ。
(5)左右それぞれを3等分する線を引く
これもだいたいで(^^)
(6)それぞれを2等分する線を引く
ほぼ完成です。
完成
矢印は、上下階ともに上り矢印を書きます。
下り矢印を書いても誤りではないですが、JIS企画では上り矢印のみ書くようになってますので、それに合わせる方がかっこよいかもしれません(^^)
また、段数の表記は省略してOKです。
建物の階高によって階段の必要段数は異なります。
階高4000の場合は、蹴上153×26段となります。
一級建築士製図試験ではバリアフリーに配慮した建物を求められるので、急な階段や回り階段は避けましょう。
エレベーターは簡単なので、特に決まった書き順はありません。
階段とセットで個別に練習してパッと描けるようにしておいてください。
②家具(テーブル・椅子など)を個別に練習する
付帯設備としてテーブルや椅子などの表現を要求されます。
最近は面積の指定がなく「適宜」として面積を受験者に決めさせる問題が多いです。
2017年も適宜続出だと考えられます。
そして、付帯設備としてのテーブル・椅子の数が明確に指定されるようになりました。
これは、要するに「テーブル椅子をちゃんと描きなさい」ということです。
しっかり練習して早く描けるようにしましょう。
ポイントは、焦らず丁寧に描くことです。
何となく苦手だな〜と感じますか?
ここは、実はみんな嫌な部分なんです(笑)
みんなが苦手な部分を逆に得意にしてしまいましょう!
③外部施設(車寄せ・駐車場・植栽など)を個別に練習する
外部施設に「車回し」「車寄せ」が名指しで指定されてきました。
これまで練習してきた人も何となく不安な気持ちになりますよね。
しかし、ここは資格学校や市販問題週の回答例・解説を信じて繰り返し描く練習をすることで克服できます。
・車寄せ
・駐車場
・ゴミ置き場
・植栽
・通路
はセットで描けるようになるまで繰り返し繰り返し描いてください。
できれば、1日で完璧になるくらいの集中力でやってみましょう。
とにかく1日1日が大切です。
大切な時間をムダにすることがないよう、頑張ってください。
④断面図を個別に練習する
断面図は平面図が終わってから描く人がいますが、大抵時間が足りない中で描くことになります。
残り20分を切ってから断面図の補助線を描くような状況になります。
そうなると、焦りますよ。
手が震えて汗が出てきます。
そんな局面でも、練習が物を言います。
断面図だけを10連続で描く、という時間を作ってください。
一つ15分で描けるようになるはずです。
高さ寸法等は、階高ごとに暗記しましょう。
スラブの厚さや天井高など、細かい部分も全て暗記です。
切る位置は出来るだけ断面がシンプルになる位置を探す癖をつけてください。
どうしても変な位置になってしまうという場合は、切断線を曲げてもOKです。
本番では慌てずに対処してくださいね。
⑤面積算出・面積表を個別に練習する
面積算出と面積表記入は練習によって早くなります。
エスキスの段階で正確な数字を出し、清書の解答用紙に面積表のみ記入してしまっても良いでしょう。
早い段階で一度製図板を動かすのは、周りの受験生へのプレッシャーとなるため、できるだけ音がガタガタ出ないように配慮してくださいね。
⑥文字を個別に練習する
文字はあまり重視する人がいませんが、文字の練習は個別にやってください。
書き取りノートとして方眼ノートを用意して、記述や図面に書くような言葉を練習します。
文字の練習をすると、それまで腕が痛くなるほど力んで書いていた文字がスラスラ書けるようになってきます。
毎日、方眼ノート見開き1ページ使ってギッシリと文字の練習をしましょう。
その時、「小さく書く練習」も兼ねて、できるだけ小さく書くようにすると良いです。
製図においては文字は小さい方がキレイに見えます。
出来栄えが良い図面を作ることはある意味一番重要なことですから、文字を小さく書くというのは必ずマスターしてください。
⑦見直し項目の暗記
見直し項目とは、エスキスや製図の完了後に見落としや書き間違いなどが無いかチェックする項目のことです。
ひとつひとつその場で考えながら見直しすると、どうしても15分くらいかかってしまいます。
見直しに15分もかけていたら、もし間違いが見つかった場合に修正している時間がないですよね。
すごく焦ってしまい、間違っていないところを消してしまったり、消して書き直したのに、また同じ間違いを書いてしまったりします。
そうなっては目も当てられませんよね。
そのために見直し項目の暗記をするんです。
見直し項目は以下の通りです。
項目 | |
---|---|
寸 | 主要寸法の表記 |
駐 | 駐車場・駐輪場の台数 |
外 | 外部施設(広場、植え込み、ゴミ置き場、キュービクルなど) |
欠 | 要求室などの欠落 |
階 | 階違反 |
面 | 面積違反 |
特 | 特記事項の違反 |
段 | 階段の欠落・位置の不整合 |
二 | 二方向避難の確保 |
防 | 防火区画(階段の防火戸、吹き抜けの防火シャッター) |
構 | 構造違反(指定がある場合) |
耐 | 耐力壁(必要な場合) |
S | シャフト(DS・PS・EPS) |
排 | 排煙(脱衣室の窓、機械排煙など) |
EV | エレベーターの大きさ、台数 |
便 | 便所・更衣室等 |
バ | バリアフリー配慮(段差解消、廊下幅など) |
開 | 開口部の表現 |
名 | 室名・施設名・面積の表記 |
出 | 出入り口の表記 |
吹 | 吹き抜けの表記・不整合はないか |
屋根 | 屋根形状(切妻・陸屋根) |
地 | 地下部分(平面図の破線、断面図)の表記 |
切 | 切断位置・方向の表記 |
合 | 不整合(図面相互・図面と記述の不整合) |
範 | 面積が要求範囲内かどうか |
断位置 | 断面の切断位置不整合はないか |
GFL | GL・FLの表記(断面図) |
建 | 建築物高さ(断面図) |
軒 | 軒の高さ(断面図) |
階 | 階高(断面図) |
天 | 天井高(断面図・平面図に指定がある場合) |
C | 柱(Column・伏図) |
G | 大梁(Girder・伏図) |
B | 小梁(beam・伏図) |
W | 壁(wall・伏図) |
S | スラブ(slab・伏図)※下げる場合は断面図注意! |
テーブル | テーブル(四角・丸) |
椅子 | 椅子(四角・丸) |
ひさし | 庇・下屋根等(平面図・断面図) |
煙突 | ボイラー室に設ける煙突 |
これを、学科でもやった「頭文字暗記法」で一気に覚えてしまいましょう。
寸駐外
欠階面特
段二防構耐
S排EV
便バ開名出吹屋根地切合
範断位置
GFL建軒階天(断面図)
CGBWS
テーブル椅子ひさし・煙突
読み方は以下の通りです(重要)
- 寸駐外=すんちゅうがい
- 欠階面特=けっかいめんとく
- 段二防構耐=だんにぼうこうたい
- S排EV=エスはいイーブイ
- 便バ開名出吹屋根地切合=べんばかいめい でふきやね ちせつごう
- 範断位置=はん だんいち
- GFL建軒階天(断面図)=ジーエフエル けんけんかいてん
- CGBWS=シージービー ダブリューエス
- テーブル椅子ひさし・煙突=テーブルいすひさし えんとつ
これを暗記してリズムよく唱えることで、一瞬で見直しができます。
みんなが毎回15分くらいかける見直しが、一瞬でできるならかなり有利ですよね。
ぜひ暗記して、見直しの漏れがないようにしましょう。
以上、今回は一級建築士製図試験の時間配分や時間短縮方法、階段の早い書き方と個別練習が可能な項目の紹介をしました。
参考にして、時短に役立てていただければと思います。
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