
2017年(平成29年度)の二級建築士製図試験の課題は「家族のライフステージの変化に対応できる三世帯住宅」(木造2階建て)です。
いきなり引っかかりやすいワードが出ていますね(^^)
「三世帯住宅」
ではなく、
「三世代住宅」
です。
世帯と世代の違いは、以下の通りです。
- 世帯とは住居(家)と生計を共にする集団
 - 世代とは親から子・孫と繋がるおよそ30年を一区切りとした代(年齢層)
 
家族一人ひとりや全体としてのライフステージの変化に対応する必要があります。
2017年課題の詳細は後半で解説します。
二級建築士の製図試験ではどのようなことが問われ、どのような図面を書く必要があるのか学んでいきましょう。
今回は過去の課題(過去問題)をみてどんなことに気をつけて製図試験に挑めば良いのか、傾向と対策を紹介します。
二級建築士設計製図試験課題2001~2016年の変遷と合格率
二級建築士設計製図試験の課題変遷を見ていきましょう。
2001年(平成13年度)二級建築士設計製図試験課題
2001年(平成13年度)二級建築士設計製図試験課題は近畿以外の地区と近畿地区で課題が違いました。
北海道・東北・関東・東海・北陸・中国四国・九州地区
英会話教室併用住宅(木造2階建)
面積=230~270㎡
近畿地区
ルーフガーデンのある親子二世帯住宅(RC造2階建)
面積=240~280㎡
| 54.5% | 
2002年(平成14年度)二級建築士設計製図試験課題
2002年(平成14年度)二級建築士設計製図試験課題は北海道・東北・関東・近畿・中国四国地区と北陸・東海・九州地区で課題が違いました。
北海道・東北・関東・近畿・中国四国地区
工房のある工芸品点併用住宅(木造2階建)
面積=190~230㎡
北陸・東海・九州地区
商店街に立つコミュニティ施設(S造2階建)
面積=250~290㎡
| 56.1% | 14.2% | 14.2% | 15.5 | 
2003年(平成15年度)二級建築士設計製図試験課題
2003年(平成15年度)二級建築士設計製図試験課題は近畿地区以外の地区と近畿地区で課題が違いました。
北海道・東北・関東・東海・北陸・中国四国・九州地区
吹き抜けのある今をもつ専用住宅(木造2階建)
面積=180~220㎡
近畿地区
住宅地に立つ動物病院併用住宅(RC造2階建)
面積=240~280㎡
| 55.5% | 14.7% | 14.7% | 15.1% | 
2004年(平成16年度)二級建築士設計製図試験課題
趣味(フラワーアレンジメント)室のある専用住宅(木造2階建)
面積=150~190㎡
| 55.9% | 14.8% | 20.2% | 9.1% | 
2005年(平成17年度)二級建築士設計製図試験課題
近隣の町並みに配慮した車庫付二世帯住宅(木造2階建)
面積=180~220㎡
| 54.5% | 13.5% | 14.2% | 17.8% | 
2006年(平成18年度)二級建築士設計製図試験課題
地域に開かれた絵本作家の記念館(RC造2階建)
面積=260~290㎡
| 55.8% | 15.2% | 19.8% | 9.2% | 
2007年(平成19年度)二級建築士設計製図試験課題
住宅地に立つ喫茶店併用住宅(木造2階建)
面積=190~230㎡
| 50.9% | 7.6% | 16.0% | 25.5% | 
2008年(平成20年度)二級建築士設計製図試験課題
高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅(木造2階建)
面積=180~230㎡
| 52.0% | 8.1% | 25.6% | 14.3% | 
2009年(平成21年度)二級建築士設計製図試験課題
商店街に建つ陶芸作家のための工房のある店舗併用住宅(EC造3階建)
面積=270~300㎡
| 53.0% | 16.7% | 19.9% | 10.4% | 
2010年(平成22年度)二級建築士設計製図試験課題
兄弟の二世帯と母がクラス専用住宅(木造2階建)
面積=210~250㎡
| 52.1% | 14.2% | 18.9% | 14.8% | 
2011年(平成23年度)二級建築士設計製図試験課題
趣味(自転車)室のある専用住宅(木造2階建)
面積=160~200㎡
| 52.6% | 15.3% | 23.8% | 8.8% | 
2012年(平成24年度)二級建築士設計製図試験課題
多目的スペースのあるコミュニティ施設(RC造2階建)
面積=260~300㎡
| 52.5% | 15.4% | 24.5% | 7.6% | 
2013年(平成25年度)二級建築士設計製図試験課題
レストラン併用住宅(木造2階建)
面積=170~210㎡
| 53.0% | 15.8% | 21.6% | 9.6% | 
2014年(平成26年度)二級建築士設計製図試験課題
介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅(木造2階建)
面積=140~180㎡
| 55.3% | 13.5% | 23.1% | 8.1% | 
2015年(平成27年度)二級建築士設計製図試験課題
3階に住宅のある貸し店舗(乳幼児用雑貨店)(RC造3階建)
面積=230~300㎡
| 54.0% | 14.1% | 25.1% | 6.8% | 
2016年(平成28年度)二級建築士設計製図試験課題
景勝地に建つ土間スペースのある週末住宅(木造2階建)
面積=160~190㎡
| 合格率 | ランクⅡ | ランクⅢ | ランクⅣ | 
|---|---|---|---|
| 53.10% | 16.30% | 18.10% | 12.50% | 
2017年(平成29年度)二級建築士設計製図試験課題 NEW
家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建)
 
 
過去の合格率を見ると分かるのですが、過去15年間で50%を割ったことはないんですよね。
半数以上の方が合格する試験です。
これを踏まえて、以下の傾向と対策を見てみましょう。
二級建築士設計製図試験の傾向と対策
二級建築士設計製図試験の傾向と対策を見ていきましょう。
まず、二級建築士設計製図試験は半数以上の方が合格する試験です。
ということは大事なことはまず最後まで描ききるということですね。
しっかり描ききることが重要です。
エスキスで多少無理のあるプランかな?と思っても躊躇せずに進むことがポイントです。
エスキスで手詰まりになって考えすぎてしまうと時間ばかりが過ぎて余計に焦ってきます。
建築物として安全な構造であればとにかく土俵に乗ることができますから、時間切れになって図面が完成しないという状況だけは避けてください。
時間がなくて完成しなかったり、焦ってしまって図面を描く場所を間違えたり、1階と2階の不整合があったりするとランクⅣという判定になります。
毎年7~25%の方がランクⅣをもらっています。
まずはしっかり時間配分をして最後まで描ききることを目指しましょう。
二級建築士設計製図試験2017の概要
二級剣士櫛設計製図試験2017は、7月2日(日)11:00~16:00に行われます。
2017年の課題は、
「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅(木造2階建て)」
です。
要求図書は以下の通りです。
- 1階平面図兼配置図
 - 2階平面図
 - 立面図
 - 断面図
 - 2階床伏図兼1階小屋伏図
 - 部分詳細図(断面)
 - 面積表
 - 仕上表
 - 計画の要点
 
外壁の仕上げは試験課題文中で指定される
以下、対策です。
二級建築士製図試験2017の傾向
「家族のライフステージの変化」に対応できる「三世代住宅」とは、どういうものでしょうか。
キーワードに区切って見てみましょう。
- ライフステージ
 - 三世代住宅
 
ライフステージとは、人生の節目によって段階的に変化していく状況です。
出産や入学・卒業、就職、結婚、退職などですね。
三世代住宅とは、親・子・孫が同居する家のことです。
主に、高齢者に配慮した設計をする必要がありますね。
高齢者に安全な家は、小さな子供や大人にとっても安全だと言えます。
ただし、「変化」という部分での工夫が要求されるというところに注意が必要です。
今回の課題の出題は、少子高齢化対策や子育て支援、地域に根ざした良質な木造住宅の推進等が背景となって考案されたと考えられます。
建築士試験には、現在の社会で起こっている時事的な問題が取り入れられますので、課題の意味をよく考えることは重要です。
過去の出題で2017年の課題に近いものは、
「ライフステージの変化」をテーマにしたものとしては2014年の「介護が必要な親(車いす仕様車)と同居する専用住宅」が上げられます。
「三世代住宅」をテーマとした課題は多く、上記の2014年課題をはじめ、
2010年「兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅」
2008年「高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある専用住宅」
2005年「近隣の町並みに配慮した車庫付き二世帯住宅」
2000年「趣味(音楽)室のある親子に世帯住宅」
などがあります。
二級建築士製図試験2017の対策
対策を見ていきましょう。
- 敷地条件について
 - 屋外施設について
 - 要求室について
 - 建物の規模について
 - ライフステージの変化について
 - 外壁の仕上げについて
 
敷地条件について
道路と敷地の関係は、オーソドックスなタイプが想定されます。
一方向またはに方向道路ですね。
広さは三世代同居ということを考えると、比較的ゆったりとしたもだと考えられます。
18m×18m程度を想定しておくと良いでしょう。
屋外施設について
屋外施設とは、敷地内の屋外に配置されるものです。
過去の出題を考慮すると、以下のものが考えられます。
- 駐車場(1~3台分)
 - 駐輪場(1~5台分)
 - 植栽
 - 家庭菜園
 - テラス
 
要求室について
要求される部屋は以下のものが考えらます。
親世帯・子世帯共通で使用する部分
- 玄関
 - LDK(リビング・ダイニング・キッチン)
 - フリースペース
 
親夫婦が使用する部分
- 寝室
 - 和室
 - 納戸・物置
 - 浴室・洗面脱衣室
 - 便所
 
夫婦・子供が使用する部分
- 寝室
 - 子供室
 - 納戸・ウォークインクローゼット
 - 浴室・洗面脱衣室
 - 便所
 
※共用・親世帯・子世帯の各部分は分けられない可能性もあります。
※リビング・ダイニング・キッチンは親世帯・子世帯両方に要求されるかもしれません。
各室の広さについては指定されることもありますが、反復練習により掴んでいってください。
エスキスは、ゾーニングからラフプランまでは「チビコマ」でやると良いですよ。
5mm×5mm方眼を1坪として使用する手法です。
大体の間取りが決まるまでたくさんプランを考えて、良いものを大きな縮尺で書くようにすると効率的です。
建物の規模について
過去の出題から、木造2階建ての家は、延床面積160㎡~250㎡程度が主流です。
「坪」に換算すると、
48.304坪~75.475坪程度です。
㎡と坪の関係は以下の通りです。
- 1坪=3.3124㎡
 - 1㎡=0.3019坪
 
「坪」から「㎡」を計算するには
- 48.304坪×3.3124≒160㎡
 - 75.475坪×3.3124≒250㎡
 
「㎡」から「坪」を計算するには
- 160㎡×0.3019≒48.304坪
 - 250㎡×0.3019≒75.475坪
 
となります。
ライフステージの変化について
ライフステージは以下の段階が考えられます。
親世代
- 退職
 - 老後の生活
 
子世帯
- 結婚
 - 出産
 - 子育て
 
孫世代
- 幼児期
 - 入学・卒業
 - 就職・独立
 
これらの段階を経ていくことを考慮して設計をする必要があるわけです。
どのように変化していくのかというと、
現在
- 親夫婦=60歳
 - 子夫婦=35歳
 - 孫=3歳
 
10年後
- 親夫婦=70歳
 - 子夫婦=45歳
 - 孫=中学1年生
 
3歳の子供が、10年後には中学生になるんです。
きっと、自分の部屋を欲しがりますよね。
それを想定して、リビングの一部を可動間仕切り等で仕切れるように設計すると良いです。
子供が独立した歳には簡単にもとに戻せますので。
外壁の仕上げについて
2017年の課題では、外壁の仕上げが指定されるということになっています。
どんな外壁仕上げが指定されるかは当日になるまで分かりません。
例年は、各自が自分で設定して決めることになっていました。
指定されるとなるとちょっと気になりますよね。
考えられる外壁の仕上げは、
- 窯業系サイディング仕上げ
 - ガルバリウム鋼板仕上げ
 - モルタル塗り+塗装仕上げ
 - タイル仕上げ
 - ALC(気泡コンクリート)仕上げ
 
等があります。
独学で製図試験を受けられる方は、各仕上げの断面を以下のサイトで確認して練習しておくと良いです。
外壁材メーカーのホームページにあるWEBカタログの施工資料が参考になります。
▶ ニチハ株式会社のカタログページ(窯業系・金属製外壁材)
 
また、実務経験が無い場合、Google画像検索でイメージを深めると良いです。
▶ 「木造 外壁 窯業系」で画像検索
▶ 「木造 外壁 ガルバリウム」で画像検索
▶ 「木造 外壁 モルタル」で画像検索
▶ 「木造 外壁 タイル」で画像検索
▶ 「木造 外壁 ALC」で画像検索
以上、今回は二級建築士設計製図試験課題の変遷と合格率、傾向と対策をお送り致しました。
最近の二級建築士試験は上述したとおり、時事的な問題を絡めた出題が多いです。
出題意図を以下に汲み取るかが合格の鍵となります。
「計画の要点(記述問題)」も軽く考えず、製図と同じだけ重要だと考えましょう。
今回の記事を参考に、いくつも予想問題をこなして製図力を付けて是非合格を勝ち取ってください。