2017年の一級建築士製図試験の課題は
「小規模なリゾートホテル」
です。
資格学校やネット添削サービスでは、様々な課題を今後用意して勉強していますね。
一級建築士製図試験では、基本的には建築面積1000㎡前後の鉄筋コンクリート造の建物を計画します。
これは解答用紙のサイズによる制限や、手書き技能の見極めのために縮尺が1/100で固定されていることから今後も大きく変更されることはないと想定されます。
そのため、課題の種類によって有利不利になるということはほとんどありません。
今回の例で言えば、実際にリゾートホテルやペンションの設計をやった経験が有っても無くても、試験の合否にそれほど大きな影響は無いんです。
しかし、小規模なリゾートホテルの実例を見に行っておいたほうが、プランを作る際に有利です。
敷地やサイズ感、太陽光の入り具合などを身体で感じる事ができるからです。
ですが中々時間をとって見学に行くことって難しいですよね。
そこで今回は、国内にある小規模なリゾートホテルの実例画像を集めてみました。
後半では、小規模なリゾートホテルの出題された背景についても触れています。
1.一級建築士製図試験2017「小規模なリゾートホテル」実例画像まとめ
一級建築士製図試験2017で出題された小規模なリゾートホテルの事例は探してみるとあまり出てきません。
しかし、まったくない事はないんです。
今回は参考にすべき実例の画像を集めてみました。
①青山ホテル(メナード青山)
青山ホテルは、三重県伊賀市にあるリゾート「メナード青山」の敷地内にある小規模リゾートホテルです。
建物北側にある車寄せから玄関を入るとエントランスホールがあります。
↓玄関・車寄せ
メナード青山ホテルの車寄せは一級建築士製図試験で出題される典型的な車寄せです。
サイズ感の確認に最適ですね。
図面上でのみ見ていると、車が実際にどのように曲がって進入してどうやって人が乗り降りするのかがイメージしにくいですよね。
ぜひ実際に利用しているところを見てから製図してみてください。
書きやすさが変わりますよ。
↓エントランスホール
この辺は一級建築士試験に出る建物に近いんじゃないでしょうか。
南側は斜面になっており、室内から自然豊かな敷地を見渡せるように配置されています。
↓ホテル全景
エントランスのある部分の屋根は寄棟屋根で、その他の部分は切妻屋根としています。
全体的にオレンジと白でコーディネートされていて統一感が有りますね。
↓大きな窓のレストラン
南側の窓を大きく取ることで明るく開放的な空間となるように工夫していますね。
この「明るく開放的な空間となるように工夫」は、一級建築士製図試験の「記述」問題においてお約束的な表現となっています。
だれもが記述の中で一度は使う言葉です。
こんな雰囲気なんだな、と感じて頂ければと思います。
↓和室
一般的な和室です。
障子の向こうには縁側があって、ローテーブルとソファでくつろげるようになっていますね。
チェックイン後の束の間の時間をお茶を淹れて愉しむのも良いですね。
↓洋室
洋室も清潔感がありゆったりとしていて良いですね。
メナード青山ホテルの「メナード」は化粧品のメーカーのメナードのことです。
メナードの化粧品がアメニティグッズとして置いてあるんだとか。
↓大浴場
大浴場の浴槽部分はスラブを下げて作ります。
断面図に段差部が現れないように切断位置を検討しましょう。
できれば、エスキス段階で意識できるようにしたほうが良いです。
↓洗い場
洗い場の間隔は平面図だけを書いていると中々つかみにくいものです。
これはスーパー銭湯等と共通なので、近所の銭湯に行った際に寸法を体感してみてください。
②アンダリゾート伊豆高原
アンダリゾートはバリのテイストを色濃く出したデザインとサービス・食事で人気の小規模リゾートホテルです。
↓建物外観
アンダリゾート伊豆高原は、低い軒が特徴的なアジアンテイストあふれる外観をしています。
来訪者を優しく招き入れるような感覚を受けますね。
↓玄関
アンダリゾート伊豆高原の玄関は独特の彫り物で装飾されていますが、計画としてはオーソドックスな風除室付きのエントランスとなっています。
一級建築士製図試験ではおなじみの形ですね。
実例では装飾もほどこされているということを意識していきましょう。
↓エントランスホール横のラウンジスペース
南側と南側が全面開口となっていて、明るく開放的な空間となっています。
ラウンジから見える豊かな自然を見ていると時間を忘れてしまいそうですね。
天井の埋め込み照明も大振りな格子模様を施してあって、窓とコーディネートされています。
↓客室
それぞれアジアンな雰囲気が抜群ですよね。
隅々まで行き届いた「見せる工夫」にやられます。
③とかしくマリンビレッジ
とかしくマリンビレッジは、沖縄県島尻郡渡嘉敷村にある小規模リゾートホテルです。
↓エントランスホールと受付カウンター
玄関を入ると風除室はなく、直にエントランスホールです。
左手に受付カウンターがあり、利用者の入退館の管理がしやすくなっています。
小規模リゾートホテルのような宿泊施設は、入退館のチェックがしやすい計画とすることが重要です。
このように、玄関近くに設置し、階段やエレベーターも同時に見渡せる位置に計画します。
↓レストラン
レストランは、太陽光を豊富に取り入れられるように、窓の上端が天井面にくっつくように設定されています。
窓の上に垂れ壁が無いことによって、窓際の逆光を防ぎ、室内をより明るく感じられるように工夫していますね。
単に窓を大きく取る計画では、垂れ壁の暗さによってかえって暗く感じてしまうこともあるので、高さ設定による明るさのコントロールは非常に有効です。
↓客室
とかしくマリンビレッジの客室は非常にシンプルな作りです。
壁と天井の間に梁型が見えますね。
鉄筋コンクリート造の柱・梁の存在が室内から分かる作りとなっています。
梁型が見えるということは、階高を低く抑えているということですね。
↓外部テラスのテーブル席
外部テラスで食事すると、自然を間近に感じられるし、風が吹き抜けて気持ち良いですよね。
一級建築士製図試験では、テラスやデッキにテーブル椅子の設置が要求されることが多いです。
40人〜50人分の席など、多めに書かせるケースもあるので、たくさんのテーブル椅子を速く綺麗に書ける練習をしておくと有利になります。
↓航空写真
とかしくマリンビレッジの航空写真です。
どれだけ海に近いか分かりますね(^^)
敷地に高低差があり、避難階が複数あることがうかがえます。
2.一級建築士製図試験2017「小規模なリゾートホテル」の出題背景
今回の試験課題が出題される背景には、
①2020年に開催される東京オリンピックによる来日外国人観光客の増大
②日本の伝統を感じられる観光地や世界遺産付近の地域の施設用地確保の問題
があります。
①2020年に開催される東京オリンピックによる来日外国人観光客の増大
オリンピックの力ってやはり凄いんです。
2020年に東京オリンピックが開催されますよね。
それに向けて海外からの旅行者や取材陣、選手の家族や友人たちがものすごい数日本に来るんです。
そして、数十日間の滞在をするわけです。
その間には競技の合間を縫って日本各地への旅行を計画する人も多いでしょう。
とてつもない経済効果ですよね。
さらに、オリンピックが終わってからも、日本を気に入った人たちがリピートする可能性が高いです。
また、リピートの多さが話題となり日本に興味を持つ外国人も増えると予想されています。
実際に訪れた人も、日本の良さを発信すると考えられますね。
そのため、オリンピック景気は、観光においては開催時期までに留まらず、開催後も継続して(あるいはどんどん上昇して)いくと想定できます。
そこで、2017年の一級建築士製図試験の課題ですが、「小規模なリゾートホテル」というシンプルなタイトルになっていますね。
小規模なリゾートホテルの新築需要が急増しているんです。
当然、大中規模のリゾートホテルというのは言うまでもありませんが、東京オリンピック開催が決まってすぐから計画がどんどんスタートしてます。
これから計画を練る施設としては、自然と「小規模」なものになってくるわけです。
②日本の伝統を感じられる観光地や世界遺産付近の地域の施設用地確保の問題
リゾート宿泊施設の計画を今後始めようとする場合、自ずと小規模なものとなりそうです。
それは、東京近郊のリゾート地を中心に、用地の確保が難しくなっていることが原因です。
世界遺産周辺なども同様ですね。
人気の地域は既に大手デベロッパーが土地を押さえています。
中小の不動産業者では物件を探すどころか、地上げをしようにも大きな地主さんは既に交渉中という。
そのため、ペンションやロッジのような小規模施設を計画することになります。
ただし、小規模といっても一級建築士製図試験の出題傾向は建築面積(≒1階の面積)1000㎡程度の建物が多いです。
1000㎡は約300坪ですから、500坪くらいの土地が無いと成り立ちませんね。
住宅をメインに仕事している場合、「十分大規模じゃないか」と感じてしまいます。
以上、今回は小規模なリゾートホテルの実例をまとめました。
平面図等にした時にどうなるか意識して画像を見て頂ければと思います。
また、今後は平面図上の自分の計画が実物としてどうか、ということを意識してプランニングしてみると良いです。
一級建築士製図試験でのプランニングの参考にしていただければと思います。